同じ保険対象に対して、同じ補償内容の火災保険に加入することを「二重加入」といいます。
二重加入している人のほとんどは保険料を必要以上に多く支払ってしまっていることになります。
知らずしらずの内に複数の保険会社に加入しているケースもあり、気づくと何年も重複した補償内容で二倍の保険料を支払ってしまっていた!ということも少なくありません。
火災保険が二重加入になっていないかは一度きちんと確認しておくことをおすすめします。
本記事では、「二重加入」することでどんなデメリットがあるのか。また、二重加入してしまっていた場合の対処方法を解説しますのでぜひ、最後までご覧ください。
「二重加入」とは
複数の保険会社へ二重加入することを保険法では「重複保険」といいます。第20条で以下の通りに定められています。
(重複保険)第二十条 損害保険契約によりてん補すべき損害について他の損害保険契約がこれをてん補することとなっている場合においても、保険者は、てん補損害額の全額(前条に規定する場合にあっては、同条の規定により行うべき保険給付の額の全額)について、保険給付を行う義務を負う。2 二以上の損害保険契約の各保険者が行うべき保険給付の額の合計額がてん補損害額(各損害保険契約に基づいて算定したてん補損害額が異なるときは、そのうち最も高い額。以下この項において同じ。)を超える場合において、保険者の一人が自己の負担部分(他の損害保険契約がないとする場合における各保険者が行うべき保険給付の額のその合計額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額をいう。以下この項において同じ。)を超えて保険給付を行い、これにより共同の免責を得たときは、当該保険者は、自己の負担部分を超える部分に限り、他の保険者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。引用元:保険法
火災保険の「二重加入」で保険金は多くもらえる?
火災保険は複数社から「二重加入」しても保険金は多くもらうことはできません。
病気や死亡にかける生命保険では同じ対象者へ複数社の保険に加入している場合、加入しているすべての保険会社から保険金をもらうことができます。
では、火災保険も同じ対象(建物・家財)に対して複数社の保険に加入している場合「保険料を支払っているのだから、生命保険と同様にすべての保険会社から保険金出るのは?」と考える方も多いでしょう。
しかし、火災保険は生命保険とは異なり、複数社加入しても保険金が多くもらえるわけではありません。
火災保険「二重加入」してしまうケースとは?
しかし、なぜこのような「二重加入」が起こってしまうのでしょうか?
実際に「二重加入」してしまった事例を見てみましょう。
- 損害保険と共済を別々に加入
- 親子で二重加入していた
- 増築時に火災保険に加入し、既契約の内容と重複していた
- 住宅購入で不動産契約時に加入したのを忘れて重複した加入した
- 「建物」「家財」を別の保険会社で加入し、特約が重複
ケース①:「損保会社」と「共済」を別々に加入
損保会社で火災保険は加入しているが、会社などでから共済の火災保険に勧められて加入。数年間に渡り同じ補償内容の保険料を支払っていた。
「損保会社」と「共済」の内容が異なる保険だと思っていた場合に起こるケースです。
ケース②: 親子で二重加入していた
親が加入していたことを知らずに、息子が火災保険へ新規加入。この場合、同じ保険対象に対して親子で二重に保険料を支払っていた。
親が所有していた建物を引き継ぐ場合や二世帯で住んでいる場合に起こりうるケースです。
ケース③:増築時に火災保険に加入し、既契約の内容と重複していた
増築時に異なる保険会社で加入。既契約の火災保険と補償内容が重複してしまっているケース。
建物を増築する場合は、増築部分の火災保険への加入が必要となりますが、保険会社は他社の保険内容を調べることができません。
他社でどんな補償内容の保険に加入しているかは、自己申告する必要があります。
ケース④:住宅購入で不動産契約時に加入したのを忘れて重複した加入した
火災保険は不動産購入と一緒に加入するケースが多いですが、火災保険へ加入したことを忘れてしまい、複数の火災保険に新規加入してしまった。
長期間の火災保険に加入していると、補償内容を定期的に見直す人は少ないため、起こりうるケースです。
ケース⑤: 「建物」「家財」を別の保険会社で加入し、特約が重複
保険対象には「建物」と「家財」の二種類がありますが補償対象が異なるため、異なる保険会社へ加入。特約部分が重複していた。
補償対象が異なる2種類ですが、同じ内容の特約があるため二重加入になりやすいケースです。
重複する可能性が高い補償内容はこちら。
- 類焼・失火見舞費用補償特約
- 借家人賠償責任特約
- 個人賠償責任補償特約
もしも火災保険を「二重加入」していたら補償はどうなる?
「二重加入」していても被災時には、もちろん補償があります。
しかし気になるのは複数に加入していた場合に
「補償内容はどうなるのか?」
「どのように支払われるのか?」という点ですよね。
ここでは「二重加入」していた場合の補償や保険金の支払いについて詳しくご説明します。
損害額以上の支払いはない
例えば、あなたが2社(A社・B社)の火災保険で全く同じ補償内容加入していて、台風の影響で20万円の損害額があった場合の支払いはこちら。
✕ A社+B社=40万円
◯ A社orB社=20万円 |
A社・B社どちらか一方から損害額の20万円を請求はできますが、それぞれの会社から20万円ずつ保険を受け取ることはできません。
限度額(評価額)以上の支払いはない
建物や家財に評価額を超える保険を複数社かけていて、全壊・全焼してしまった場合の支払いはこちら。
例)評価額3000万円の建物 A社3000万円、B社2000万円
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※どちらの会社からどのくらいの保険金が下りるかの詳しい割合に関しては、保険会社同士の話し合いによって決定されます。
A社から全額の支払い、A社・B社それぞれから半分ずつ支払われるなどさまざまなケースが考えられますが、どちらにせよ限度額を超える保険金支払いはありません。
- 二社それぞれに保険金請求が必要
- 保険金の支払完了までに通常よりも長い時間がかかる
など、保険金請求時にデメリットが多いのも二重加入の特徴です。
二社の火災保険が有効になるケースもある
それぞれの保険会社で評価額より低い金額で保険加入している場合でも稀に火災保険を「二重加入」していてよかったケースもあります。
評価額3000万円の建物が全焼した場合の支払いはこちら。
例)評価額3000万円の建物 A社1000万円、B社2000万円
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上記例の場合、A社のみでは評価額に達していないため二重加入で保険をかけていたB社も有効になります。
二重加入していた場合の対処方法
では「二重加入」していることが判明した場合はどう対処すべきなのでしょうか?
二重加入していた時の対処方法をお教えします。
保険会社に確認をする
まずはそれぞれの保険会社に連絡をして、保険内容が重複していたことを伝えましょう。
評価額より低い金額で加入していた場合は問題ありませんが、「二重加入」の多くの場合は評価額を超過していることが多いです。この場合、それぞれの保険金額を下げるかどちらかを解約する必要があります。
一方、特約のみ重複していた場合はどちらかの特約のみを外すことで保険料の二重払いを防ぐことができます。
完全重複の場合は、どちらかを解約する
火災保険の補償内容が完全に被ってしまっている場合は、2つとも残しておく必要はありませんのでどちらか一方の火災保険を解約しましょう。
まとめ
「二重加入」していたことでメリットとなったケースも稀にありますが、火災保険「二重加入者」のほとんどの場合、保険料を多く払いすぎていることが多いものです。
さらに保険請求時のデメリットも多いため、火災保険の「二重加入」はおすすめできません。
見に覚えのない火災保険の保険証を見つけた場合や、加入中の保険が2つ以上あった場合は要注意です。
不必要な保険料を支払うことにならないためにも「二重加入」に気づいたら、まずは保険の見直しを検討しましょう。