台風で隣家が倒壊してきた!火災保険で修理費は請求できるの?

近年、発生するたびに、大きな被害をもたらしている自然災害。

台風や地震、豪雨、竜巻、突風、津波、噴火…どの災害も恐ろしいものです。

地球温暖化の影響もあり、異常気象も多く、近年はわたしたちの想像をはるかに超える規模の自然災害が発生しています。

建物の老朽化や、空き家の増加も、国や自治体が抱える深刻な問題の一つ。

築何十年と経ち、あちらこちらが傷んでいる民家や、明らかにメンテナンスされていない建物が近所や隣にあると、台風などが発生するたびに心配になりますよね…。

自然災害が原因で、隣家が倒れてきて自宅が被害にあった場合や、怪我をしてしまった場合、相手に損害賠償請求をすることはできるのでしょうか?

自然災害が原因だと原則賠償責任は発生しない

台風や地震、豪雨、竜巻、突風などの自然災害が原因で被害にあった場合、原則相手に損害賠償請求することはできません。

台風で隣家の木が倒れてきた、竜巻で隣家の瓦が飛んできた、このような場合も原則請求することはできません。

賠償とは「債務不履行や不法行為によって、他人に損害を与えた人が被害者に対してその損害を補償する」ものであるため、自然災害による被害は相手に故意や過失があるわけではないので、賠償責任は発生しないのです。

そのため、基本的には自分が契約している火災保険を使って修理をすることになります。

でも、火災保険の申請って難しそうですよね…。

そんなときは、申請サポート専門業者に手続きをサポートしてもらうのも一つの手段です。

火災保険の請求は、自分で行うことが原則ですが、申請サポート専門業者に依頼することでスムーズな請求、かつ請求漏れを防ぐことができます。

火災保険は自分で保険金請求するより専門業者に任せた方がいい?
注意

悪質な業者も存在しますので、見極めは慎重に行いましょう。

自然災害による被害でも隣家の管理不足が原因の場合は賠償請求できることもある

ただし、相手に賠償請求をすることができる場合もあります。

建物の所有者が、管理を怠ったことによる瑕疵によって発生した被害の場合は、相手に損害賠償請求をすることができるのです。

MEMO

住宅の瑕疵とは:本来住宅が備えるべき通常の機能、または契約で定められた機能が果たせないような欠陥・不具合のこと

参考民法抜粋
『第717条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。』
引用:e-gov法令検索民法

  • 家の一部が腐食して崩れそうなのに、そのまましていた
  • 台風がくるというのに、落ちかけている屋根瓦をそのままにしていた
  • 家の壁が崩れてきているのに、そのままにしていた

など、所有者としての管理を怠っていたことが認められた場合は損害賠償責任が発生するため、相手に損害賠償請求をすることができます。

隣家が倒壊して自宅が被害に遭う前にできることはある?

隣家がぼろぼろだったり、近所に崩れそうな空き家がある場合、被害に遭わないか心配ですよね。

トラブルになりそうな場合は、直接やり取りするのは避け、「倒壊の恐れがある物件について」役場に相談にいき、自治体から「家のメンテナンスをしっかりするよう」所有者に注意をしてもらいましょう。

近隣トラブルは、町内会長や自治体に相談するなど、一人で交渉しないことが大切です。

また、自然災害が発生すると、多発するのが悪質業者による被害。

悪質な業者に騙されないように、訪問販売に来る業者とは契約しないなどの自己防衛や、被害に遭う前に、ある程度修理業者や申請サポート専門業者の選定をしておくなどの準備をしておくといいでしょう。

国民生活センターも注意喚起をしています。

ご用心 災害に便乗した悪質商法[2022年3月18日:更新]
地震、大雨などの災害時には、それに便乗した悪質商法が多数発生しています。

悪質商法は災害発生地域だけが狙われるとは限りません。災害に便乗した悪質な商法には十分注意してください。特に最近は「火災保険を使って自己負担なく住宅の修理ができる」など、「保険金が使える」と勧誘する手口について、全国の消費生活センター等に相談が寄せられています。

引用:独立行政法人国民生活センター ご用心 災害に便乗した悪質商法

賠償責任が発生した場合には個人賠償責任保険が使える

管理不足による瑕疵が認められ賠償責任が発生した場合、使える保険はないのでしょうか?

Q.強風で屋根瓦が破損し隣家の住宅やカーポート等にあたり被害を与えてしまった場合、個人賠償責任特約で補償されますか?

A.質問のケース(自然災害によるもの)は、不可抗力でありお客さまに責任が発生しないのが一般的です。
しかし、住宅の管理状態等により法律上の責任を問われてしまった場合には、個人賠償責任の保険で補償されますので、実際に事故が起きた際には、代理店または事故サポートセンターまでご相談ください。
引用:損保ジャパン

このようなケースの場合、相手が「個人賠償責任保険」に入っていれば、
保険適用で賠償してもらうことができます。

個人賠償責任保険とは

個人またはその家族が、日常生活で誤って他人にケガをさせてしまったり、他人のモノを壊してしまったりして、法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険です。

補償の対象となる事故例は、次のとおりです。他人の「身体」や「モノ」に損害を与えた場合が対象となりますので、他人への名誉を傷つけたり、プライバシーを侵害したりしたといったケースは補償の対象外となります。

  1. お店で、代金を支払う前に商品を落とし、壊してしまった。
  2. 飼い犬を散歩中、飼い犬が他人をかんでケガをさせてしまった。
  3. 野球のバットを振っていたら、そばにいた人にケガをさせてしまった。
  4. 誤ってベランダから鉢植えを落とし、駐車中の他人の車にキズをつけてしまった。
  5. 自転車に乗っていて、歩行者をはねてしまった。

引用:一般社団法人日本損害保険協会

個人賠償責任保険は、今回のような隣家トラブルだけではなく、幅広い日常のトラブルに対応している保険です。「生計を共にする同居の親族」が補償の対象になるので、世帯主(例:お父さん)が個人賠償責任保険に加入すれば、同居している子どもも補償の対象になります。

自動車保険や火災保険の特約として加入することもできるので、同居の家族がいる方は特に、日常のトラブル予防として加入しておくのもいいでしょう。

地震や台風被害には火災保険で備えよう

「台風や地震などの自然災害が原因で発生した被害は、相手に損害責任は発生しない」ため、基本的に自分の身は自分で守らないといけません。

隣家が倒壊してきて自宅が被害にあったとしても、相手の建物管理に過失がなければ、自分で修理費用を払う必要があります。

そのため、万が一に備えて、自分の所有する家が火災保険や地震保険にしっかり加入しているか、前もって確認しておきましょう。

地震、噴火、またこれらによる津波に関しては、火災保険の対象外なため、地震保険に加入していなければ保険は適用されません。

居住している地域が、水害や豪雨による土砂崩れの可能性があるかなど、ハザードマップをチェックして、必要な保険にはしっかり加入しておくようにしましょう。
参考:ハザードマップポータルサイト

定期的に火災保険の保障内容は確認しておこう

日頃から、火災保険の保証内容は確認して把握しておくようにしましょう。

自然災害に備え、しっかりと火災保険や地震保険に入っているか、
家財はどこまで補償されるのかなど、何かあったときに備えて把握しておくことをおすすめします。

個人賠償責任保険など、近隣トラブルに備えた保険にも入っておくと、より安心できることでしょう。

保険の見直しとあわせて家族で保障内容を共有したり、防災グッズの見直しや避難場所の確認も一緒にできるといいですね。

まとめ

「自然災害が原因の被害にあった場合は賠償責任が発生しない」ため、自分の身は自分で守らないといけない。自然災害が起きたときのために、火災保険、地震保険にしっかり入っているかは確認しておきましょう。

今回のこの記事は「被害にあった場合のこと」でしたが、いつなんどき自分が被害を与えてしまう立場になるかわかりません。近隣トラブルや日常生活で起こる不測の事態に備えて、個人賠償責任保険の加入もぜひ検討してみてください。

地球温暖化による異常気象、高齢化社会による空き家増加、老朽化した管理不足物件の増加により、隣家が壊れて自分の家が被害にあう、なんていうトラブルはいつ誰の身に起きてもおかしくはありません。

自分ひとりでどうにかしようとせず、自治体や専門業者、弁護士などのサポートを上手に使いながら、解決していきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。