賃貸契約する際に、加入することを求められるのが家財保険です。また、住宅を購入する際にも家財保険に加入するかを決めなければなりません。
とはいえ家財保険が一体何に対する補償でどんな時に使えるのかといった家財保険内容を詳しく知らなければ、何を基準に決めればいいのか分からないですよね。
「火災保険とは何が違うの?」
「家財保険の必要性が分からない」
など、多くの人が悩む家財保険について、今回は家財保険の必要性から自分に合った適切な補償内容や保険金額の決め方までを詳しく解説していきます。
家財保険とは
火災保険の補償対象である「建物」と「家財」のうち、「家財」の部分を補償する保険を家財保険といいます。
家財保険では「建物」では補償されない家の中にある家具や家電といった動産物がメインの補償対象となり、日常の起こりうるさまざまなリスクから大切な財産を守ります。
火災保険と家財保険の違い
初めて火災保険に加入する方がよく混乱してしまうのが、火災保険と家財保険の違いについてです。家財保険に加入するのと、火災保険に加入するのでは何が違うの?と疑問に思っている人も多いようです。
家財保険は、建物以外の家電家具衣類等の動かすことのできる動産物を補償することに特化した保険でした。一方で、建物の保険は、家財保険ではカバーされない部分(屋根、壁や床、キッチン、お風呂といった動かせない物)に対して補償される保険です。
しかし、これら建物の保険と家財保険は、それぞれ独立した保険ではなく、あくまでも火災保険の一部です。つまり、「建物に対する補償」と「家財に対する補償」の総称を火災保険と呼びます。
特に家財に対しての補償は「家財保険」と独立した名前で呼ばれることが多いため、
- 火災保険=建物の保険
- 家財保険=家財の保険
なのでは?と考える人も多いようです。しかし実際には建物と家財どちらも火災保険の一種です。
「火災保険=建物+家財の保険」
であり、家財保険に加入するということは、火災保険という商品のうちの「家財の補償」に加入するということが正しい認識です。
家財保険の補償内容・補償範囲
ここで家財保険の内容をより深く理解するために家財保険で補償される内容と範囲について見てみましょう。
補償内容
家財保険は火災保険の一部ですので、主な補償内容は火災保険と同じですが、家財保険ではメインの補償内容にさらに「特約」を付けることで補償内容を充実させることができます。
【家財保険の補償内容】
補償内容 | 火災、破裂・爆発、水災、風災、雪災・ひょう災、落雷、盗難、破損・汚損、水濡れ、落下・飛来・衝突・倒壊 |
特約 |
|
補償範囲
冒頭で家財保険は「動産物」に対する補償であると表現しました。動産物と言われるとイメージしづらいかもしれませんが、要は引っ越す際に持っていく物のことです。
【家財保険の補償範囲と対象外のもの】
補償範囲 |
|
対象外のもの |
|
火災保険の適用範囲に関しては以下の記事も参考にご覧ください
火災保険の適用範囲とは?加入中の補償内容でどこまでカバーできてる?家財保険の保険金額の決め方
家財保険で適切な保険金額は「再調達価額=保険金額」になるように契約することです。再調達価格とは、もしも家財をゼロから全てを揃える(再調達)するとすると、いくらになるか?という金額のことです。
再調達価額を算出する方法としては以下の2つの方法があります。
- 所有している家財の金額を積算する
- 保険会社の持つ評価額(目安)を参考にする
それぞれの方法について詳しく見てみましょう。
1.所有している家財の金額を積算する
再調達価額を計算する際の基本となるのが積算方法です。積算とは、所有している家財の評価額を全て足していくというシンプルな計算方法です。家具や家電、衣類に至るまで全ての金額を評価し、計算していく必要があります。
所有している財産を計算する際の最も正確な方法であるとも言えます。
2.各保険会社の持つ評価額(目安)を参考にする
家財保険の保険金額を決める際に多くの方が採用している方法がこちらです。
積算方式は、とても正確な方法ではありますが、かなりの時間と労力を要してしまうというデメリットを持っています。こうしたデメリットをカバーしたのが、各保険会社が提示している家財の評価額(目安)です。
世帯主の年齢や家族構成に応じて、保険会社の持っているデータから割り出した平均的な家財の評価額を参考にし、家財の保険金額を設定することが一般的な方法と言えます。
家財保険は必要? 加入の必要性について
これまでの内容から家財保険についての定義はお分かりいただけたと思います。
そこで疑問に出てくるのが、家財保険加入の必要性についてです。建物は大変高価な物ですので、万が一、火事や地震で建物が倒壊したらと考えると大変なことになるということは簡単にイメージできます。
ところが、家財というと家具や家電、衣類など、そんなに大きな金額ではない物に対してわざわざプラスアルファのお金を払って加入する必要があるのか?などと疑問に思う人が多いようです。
では、火災保険に加入している人のうちどのくらいの人が家財保険に加入しているのでしょうか?家財保険の必要性について考えてみましょう。
家財保険の加入率は約5割
内閣府が行った「保険・共済加入率」の結果によると、持ち家世帯の内、民間もしくは共済への火災保険(建物もしくは家財いずれか)への加入率は約82%でした。
持家世帯(※1)の保険・共済の加入件数・割合(建物のみ)(内閣府試算)
火災保険補償あり 加入率 保険 2,123万件 61% 共済 1,168万件 33% 保険+共済 (単純合計)
3,291万件 94% 保険+共済 (重複を考慮)
2,880万件 82% *保険・共済契約なし18%
さらに、オンライン集計を行っているマイボイスコム株式会社による2021年5月に集計した民間の統計を参考に見てみると、家財保険の加入率は火災保険加入者全体の約4〜5割という結果が出ています。
損害保険加入者の、加入保険の種類は「自動車保険・任意加入」「火災保険・建物への補償」が各7~8割、「火災保険・家財への補償(家財保険)」「地震保険、地震補償保険」が各4~5割で上位にあがっています。火災保険加入者(「火災保険・建物への補償」「火災保険・家財への補償(家財保険)」いずれか回答者)は全体の6割強です。
家財の再調達価額は意外と高い!
統計を見ても、加入率が半分となると、加入すべきか迷ってしまいますよね。
しかし、家財保険へ加入すべきかどうか迷った際に参考にしてほしいのが、家財の再調達価額です。再調達価額は、万が一のことがあった時に、全てを買い換える時に必要となるお金のことですので、この金額が貯金でまかなえるのであれば家財保険に加入する必要性はありません。
三井住友海上の標準世帯における家財の評価額(再調達価格の目安)を参考にみてみましょう。
【標準世帯における家財の評価額(再調達価格の目安)】
独身世帯 夫婦のみ 夫婦・子ども1人 夫婦・子ども2人 25歳前後 300万円 550万円 640万円 730万円 30歳前後 710万円 800万円 890万円 35歳前後 990万円 1,080万円 1,170万円 40歳前後 1,220万円 1,310万円 1,400万円 45歳前後 1,400万円 1,490万円 1,580万円 50歳前後 1,480万円 1,610万円 1,700万円
上記の表からわかるように家財を全て買い換えるとなると、その費用は1,000万円近いことが分かります。もしも、再調達が必要となった時にこのお金を準備できるかどうかが、家財保険が必要かどうかの基準となります。
賃貸契約での加入は必須
先ほど参考にした家財保険の加入率4〜5割という統計はあくまでも持ち家世帯の統計であり、賃貸契約での統計ではありませんのでご注意ください。
家の持ち主が別にいる場合の賃貸契約では、家財保険の加入が契約の条件となることがほとんどです。これは自身の家財を守るためではなく、大家さんに対する「借家人賠償特約」に加入してもらうことが目的です。
大家さんとしては、万が一損失があったときに「お金がないので払えない」という事態を避けなければなりません。そこで、万が一の際にも損害金額を保険会社へ請求できるよう家財の保険に付帯する「借家人賠償特約」への加入を義務付けています。
まとめ
家財保険は、主に建物内にある動産物を補償する保険です。火災保険のうち滅多に使う機会がない建物に対して、パソコンにコーヒーをこぼして故障したといったより日常的に起こりやすいリスクを補償できるのが家財保険の特徴です。
必要性に関しては、どのくらいの家財を所有しているかの再調達価格を保険会社の評価額で確認してみることがおすすめです。
家財保険の加入を検討している方は、ぜひ本記事を参考に決めてみてくださいね。