地震大国と言われる日本では、他国に比べても地震保険の重要性は高く、いざという時にとても助かる保険です。
そこで今回は、火災保険と地震保険の違いについてわかりやすく解説していきます。実は火災保険と地震保険には、切っても切れない密接な関係があります。
地震保険は本当に必要なのか?その必要性もまとめていますので、地震保険の加入に迷っている方は、ぜひ本記事を参考に検討してくださいね。
火災保険と地震保険は別の保険と考えよう
火災を含む自然災害全般を補償するのが火災保険です。一方で、地震保険は地震に特化した損害保険です。
火災保険で家や家財の補償に加入していても、地震が原因の損害は、補償がされませんので注意しましょう。つまり、火災保険と地震保険は別物だと考えておく必要があります。
火災保険と地震保険はここが違う!
では、火災保険と地震保険のそれぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
違い①:補償範囲
火災保険では、火災、風水災などの自然災害や盗難、汚損破損といった幅広い範囲で日常に潜むさまざまなリスクを補償することが特徴です。
一方、地震保険は地震・噴火による火災、津波など、地震と噴火が原因で起こる災害に備える保険です。
財務省による地震保険の定義は以下の通り。
地震保険は、居住用の建物や家財について、地震・噴火又はこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。
なお、火災保険では、地震による火災および倒壊等は補償されません。
令和3年6月25日更新
また、火災保険は保険会社によって補償内容や範囲が異なるのに対し、地震保険はどの保険会社で加入しても補償内容・補償範囲は一律です。
違い②:保険対象の違い
次に地震保険と火災保険の保険対象の違いについて見てみましょう。
地震保険も火災保険と同様、「建物」と「家財」それぞれで契約することができますので、補償対象に違いはありませんが、保険をかける物件の対象に違いがあります。
火災保険は企業が店舗、事務所、工場、倉庫などといった物件にも保険をかけることができます。一方で地震保険の物件対象は個人の持つ住宅物件のみで、企業が地震保険を持つことはできません。
違い③:保険金額の設定方法
火災保険では、評価額をもとに保険金額を設定しますが、地震保険の保険金額は、火災保険で契約した保険金額の30〜50%の範囲で設定します。
違い④:受け取る保険金額の計算方法の違い
火災保険では受け取れる保険金の計算方法は、同等のものを新たに購入するのに必要な金額「新価(再調達価格)」と経過年数の消耗分を差し引いた金額「時価」の2種類から選択できます。一方で地震保険は「時価」のみでの計算になります。
また、地震保険の受け取り金額は保険の対象である建物または家財の損害程度によって決まります。
損害の程度 | 受け取れる金額 |
全損 | 保険金額の100%(時価額の限度) |
大半損 | 保険金額の60%(時価額60%の限度) |
小半損 | 保険金額の30%(時価額30%の限度) |
一部損 | 保険金額の5%(時価額5%の限度) |
*損害の基準に関しては財務省「地震保険制度の概要」から確認できます。
違い⑤:地震保険は単独で加入できない
地震保険は、火災保険にセットすることでのみ加入できる保険です。つまり火災保険に加入していない方は、地震保険のみを単独で契約することはできません。
違い⑥:火災保険は民間が運営、地震保険は国が運営している
火災保険に加入する時、多くの会社から選ぶことができます。火災保険は、民間の会社が運営していることはみなさんご存じのことと思います。
一方で、地震保険は日本政府と損害保険協会が管理、運営している損害保険です。理由としては、民間保険会社が倒産しないようにするためです。
例えば日本全体に地震が起こった場合、民間の損害保険会社は全世帯に莫大な保険金を支払うこととなり、莫大な借金を背負うことになりかねません。そのような事態を避けるために国が関与した地震保険制度が創立されました。
地震保険の保険料相場について
地震保険に加入しようと決めたら、まず気になるのはその保険料ですよね。
地震保険の保険料相場を知りたいという方に、ここでは、地震保険料の決まる仕組みとお得に加入する方法についてご紹介します。
地震保険の保険料は全ての保険会社で一律
火災保険は、各保険会社によってその内容も保険料も大きく異なるため、地震保険に加入する際も「まずはその保険料相場を知った上でどの保険会社に契約するかを決めたい」という方も多いようです。
しかし、先ほど説明したように地震保険の運営元は国です。そのため、どの保険会社で加入しても、補償内容や保険料は同じです。
つまり、保険会社によって違いがないので数社比較する必要はありません。現在火災保険を加入している会社で地震保険にも加入しましょう。
地震保険は割引と控除を利用してお得に加入しよう
国が運営している地震保険には、国民の自助努力を支援するために割引制度や年末調整時に使える控除制度が整っています。
地震保険の割引制度
地震保険には4つの割引制度が設けられています。
古い家に比べて建築築年数が新しく、地震対策がなされた家は、地震で倒壊するリスクが低いため、地震保険料の割引を受けることができます。
割引制度名 | 内容 | 割引率 |
建築年数割引 | 昭和56年6月1日以降に新築された建築物である | 10% |
耐震診断割引 | 建築基準法における耐震基準を満たす場合 | 10% |
免震建築物割引 | 「住宅品質確保の促進等に関する法律」に基づく「免震建築物」である場合 | 50% |
耐震等級別割引 | 「住宅品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本図歌区性能表示基準に定められた耐震等級(1〜3級)又は国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級の評価指針」に定められた耐震等級を有している場合 | 1級:10%
2級:30% 3級:50% |
地震保険料所得控除制度
平成19年1月、これまでなかった地震保険料控除が新たに創設されました。
これにより総所得金額から所得税が最大5万円、住民税が最大2万5千円を控除が可能に。地震保険に加入することで、支払う税金を安く抑えらるようになりました。
年間支払地震保険料の合計 | 控除額 | |
地震保険料 | 50,000円以下 | 支払額の全額 |
50,000円以上 | 一律50,000円 |
結局のところ地震保険は必要?
地震保険は、原則として火災保険に自動付帯となります。
つまり、特別な事情がない限り、火災保険の加入時には地震保険に加入するといった自動付帯方式を採用しています。これは、財務省によって定められていることなので、当然どの保険会社で加入しても自動付帯となっています。
しかし、なぜここまでして地震保険に加入させようとしているのでしょうか?それは今後日本に起こると予想されている地震の発生率の高さにあります。
今後30年以内に起こる震度6弱以上の揺れ
地震発生の確率はこんなに高い!!地震のメカニズムの研究目的の一つに、地震の予知・予測があります。国では、10年から100年単位での長期的な地震発生の可能性と、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を公表しています。地震に関する調査や観測の資料として、また地域防災などへの活用が期待されます。海溝型地震
数十年から数百年という短期間で地震を繰り返すのが、海溝型地震。 例えば、宮城県沖で起こる地震の平均発生間隔は約37年で、約30年前に一度地震が発生しています。そのため、10年以内にM7.5前後の地震が発生する確率は60%程度、30年以内だと99%に達します。今後30年以内に震度6 弱以上の揺れに見舞われる確率を見ると、太平洋側の大部分が26%以上 。いかに地震の危険が迫っているかが分かります。
なんと30年以内にM7.5以上の地震が発生する確率は99%と予想されています。さらに同ページによると、前回の東日本大震災で全壊被害にあった住宅の新築費用は平均2,500万円と記されています。
全壊」被害からの住宅再建にはこれだけお金がかかる
東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は、平均して約2,500万円で、それに対して公的支援として受給できるのは、善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。
今後発生が危惧されている南海トラフ巨大地震では、推定全壊住宅は 約238.6万棟 となり、 東日本大震災の約20倍になるとされています。
万が一、地震の被害に遭うと多くの財産を失ってしまい、その後の家族の生活や人生にも関わるのが大震災の怖いところです。できるだけ早く元の生活を取り戻すためにも地震保険は必須の保険といえるでしょう。
まとめ
火災保険と地震保険では、補償する範囲や対象、運営元などが大きな違いとして挙げられます。
火災保険と地震保険は全くの別物ですが、火災保険に加入していなければ地震保険に加入することはできませんし、地震保険の保険金額は火災保険の保険金によって決まるなど密接な関係にあることが分かりました。
地震被害に遭うと大きな損失を受けます。今後の地震確率を考えても、火災保険とセットで加入しておくことが賢明です。